マックスを追いかける気配はなかった。ことが起こればすぐに対処するつもりだったが本当についているやつだ。待機しているブレイクも大人しいものである。
また心配の種が一つ増えたが、まずはこの状況から抜け出すことを優先すべきだ。
ステイカーはブレイクの黒い毛に覆われた背中を叩いて、小さな報酬を与えてから、ステンレス棒を鼻先に持っていった。次の目的が明確になったブレイクはすぐに行動を始める。血の匂いを辿るのだ。
薄昏の子ら、ダンピール(1)|Living Dead the Sanctuary
いつになったら陽が落ちるのか——GT‐Rを走らせながら、ステイカーは車内時計に何度も目をやった。どこまで行っても黄昏の景色が続いている。西部日没時刻を一時間も過ぎているのに、空は薄暮れたままだった——暗闇の世界を厭うかのように。
時計が壊れているのかと思ったが、車内時計は腕時計と同じ時刻を指している。
コンフリクト (3)|Living Dead the Sanctuary
結局のところ、その日彼らは街から出られず、モーテルで一夜を過ごさなければならなかった。と言ってもエリファはろくに口を聞いてくれないので、ステイカーが勝手にそう決めただけなのだが。天候が崩れた中、妹と犬を連れて夜通し走り続けるのも難しいように思われた。二人には休む場所が必要だった。
コンフリクト (2)|Living Dead the Sanctuary
ステイカーは大股で通りを横切り、GT‐Rの扉に乱暴に鍵をさした。「ねぇ、待って! ジェイ、一体どうしたの?」
エリファが遅れてやってきた。彼女はショルダーバッグを肩に下げ、助手席側に立ち、車越しに非難がましい目を向けてくる。「なんであんなことをしたの? 見間違いにしたって——突然、ひどいよ」 犬のブレイクはエリファの横にぴったりと立ち、頭をかしげて彼女を見上げていた。「あの二人なら気にしなくてもいいよ。きっと今頃、『実演に違いない』って思ってるから」…
コンフリクト (1)|Living Dead the Sanctuary
年代物のGT―Rは頑張ってよく走ってくれた。途中、道無き道を走ったせいで車体のがたつきに拍車がかかっているが、この様子なら帰路も申し分のない働きをするだろう。ステイカーが路肩に止めてエンジンを切ると、GT―Rはほっとしたように車体を揺らして動きを止めた。
キル・ショット(2)|Living Dead the Sanctuary
ステイカーが通されたリビングルームは広く、明るい雰囲気だったが、ひんやりとした涼しさがある。リフォームしたばかりらしく、壁はクリーム色に塗られ、床はつやつやしており、傷や汚れがほとんど見当たらない。アイボリー色のカバーがかけられた大きなソファには濃い緑色のクッションがそろえられていた。
🎃ハロウィンと犬🐺
※こちらの話を読まないと、登場人物が掴みにくいかと思います。(だいぶ好き勝手に書きました) 縦横切り替え ハロウィンと犬 月に暗雲がたちこめ、雷鳴がはるか遠く、雨の到来が近い真夜中のことだった。主人 […]
杭打ち人|Living Dead the Sanctuary
とにかくこの仕事をやり遂げなければならない、とジャック・L・ステイカーは自分に言い聞かせた。標的はすでにスコープの中におさめている。乾いた大地に背の低い緑の茂み。その横の倒木の影。
狩りの終焉|Living Dead the Sanctuary
古い革表紙の裏に走り書きがある。
二つの世界を彷徨う者には、内に《二重の存在 /dual existence》を秘匿している。逃れられる者はなく、その術もなく、《彼女》もまた例外ではなかった——
セッション 07
「――あなたここで永遠に死ぬのだし」
月光の下で、吸血鬼サンクチュアリはそう言った。
先程も言ったが彼女は片目で、片腕の状態だ。肢体は不完全であり、左袖が風にめくれてはためいている。何倍も体格差のある相手に対する態度ではない。どこからその自信が出てくるのか? だが、その存在感は圧倒的だ。