見てきました。以下、簡単な感想。

突然相手のペースに巻き込まれ、そのくせ唐突に話を切り上げられるような……そういうクレイジーメイカーな人が身近にいると精神的に困憊すると思うんですけど、なんとなくそれと似た感じで、登場人物たちと一緒に疲れ果ててしまうような映画でした。作品全体が発狂してました。だいぶ、Madnessな作品。飲み込むのが難しい。何年か前にSessionという、狂気的な教師が登場するヒステリックな作品がありましたが、あれとどことなく似てる気がする。「お気に入り」の方は依存心と相手をコントロールする構図が強烈だったかな。

メインとなる登場人物は三人、アン女王、幼馴染の公爵夫人のサラ、没落した元貴族のアビゲイル(サラの従姉妹)。アン女王は体調が悪く、持病の痛風で夜毎泣き叫ぶほどで、親友のサラはそのたびに優しく付き添うのである。しかしこのサラは権力中枢にいる女性でアン女王を上手に手懐け、政治・軍事を女王に代わって仕切っている人なのだ。アン女王の側近でブレーンである。そこに没落貴族のアビゲイルという美しい女性がサラを頼って宮中にやってきて、女王をとりまくパワーバランスが崩れていく……というかなり黒い話。

全編、不安定になるBGMと演技と演出で、ホラーのようにも感じました。コメディとか信じられない。めっちゃこわいで。「え、こわいこわい、なにこれ? え?」と何度思わされたことか……。ライティングとか、ほとんど蝋燭だけだったし、顔以外全部真っ黒な映像とかゴシックホラーかと思いました。長過ぎる廊下とか不安になる。でもそこがよかった。惹き込まれる映像。

背景と衣装美術がすごくよかったです。17世紀の衣装だけど、現代的なモチーフや柄を取り入れてて面白かった。でも、シルクスクリーンみたいな?素材で細かい柄を切り抜いたレース模様とかあって「えー、それは反則~~」ってなりました。だってかっこいいし。その技術はその時代にはないだろ~~~ずるい~~~でもかっこいい。公爵夫人のサラの衣装が洗練されていましたね。ドレス姿だけじゃなくて、狩猟する時に男装のようになるんですけどそれがまた似合ってて惚れ惚れするようでした。眼帯した時が一番好き。

アン女王役のオリビア・コールマンはアカデミー主演女優賞を受賞していたんですね。さっき知りました。すごすぎる。オリビア・コールマンのことは、Hotfazzで知ったけど、とうとうそんなことに。心神喪失しかけた人の演技がリアルで迫力がありました。最後の方の女王の鬱っぽい様子とか胸がきゅっとしたな。そのくせ支配的な態度で相手をぐちゃぐちゃさせるのがなんというかすごい。精神は脆いのに絶対的支配力がある。その変わり身がたまらない。見ていて胃が痛くなる……。

そうそう、予告編の映像は、本編の序盤にほぼ全部出てきてちょっと意外でした。予告そのままだった。突然サラがやってくるのもあのとおりだった。続きは本編で見てねって感じだったのかな。アビゲイルがどんな風に機転を利かせて中枢に忍び寄っていくかが見どころ。

それにしてもこれがコメディ映画なんて嘘やろ……。全員の執着心がホラーとしか思えなかった(笑)私にはブラックユーモアを理解する頭がないのかもしれない。あと性的な表現があるので一人鑑賞の方が気兼ねがないかな。男女の話ではなく、同性愛ね。でも直接撮ってはいなくて上手に隠しているので見やすかったです。そこは品位があったかも。いや、娼館のところはまあ……そこはそういうところだから……。面白かったし、観てよかったけど、鑑賞後は若干胸にしこりが残るように不安定になるので、精神的に元気な時に見るのがいいかと思います。

あー強烈なもんみてしまった……。

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