【同人誌感想】Blindfold:奪う連中と密やかなる者たち

先日、創作同人誌小説「Blindfold2巻:奪う連中と密やかなる者たち」を読ませていただきました。1巻は紙の本を買ったのですが、2巻は電子化されていたのでそちらを購入しました。発送を待たずにすぐに読める、というのはせっかちな私にはありがたい発行形態です。文庫本と電子版両方を手に取った感覚を言いますと、紙面(画面)のサイズが異なるので読んだ時の印象ががらっと変わる気がしました。でも、Kindleに入れたらまた違うかもしれない。(アプリで読みました)映画でもそうですけど画面の大きさって、読んだときに妙に脳に影響するので、人間の目って大したことないんじゃないかな、などと考えていたり。巻末のカラーイラストが見られたのは良かったです。
上手い感想が言えるわけではないのですが、備忘録的に感想を残しておこうと思います。1巻と2巻まとめてになります。

まず、Blindfoldとは:
【世界観】産まれてすぐ視力を奪われ、代わりに特殊な聴覚機能を与えられた者たちがいた。 Blindfold──ブラインドフォールドと呼ばれる彼らはその特異性により人々から避けられている。 理不尽に奪われ与えられた彼らはある時、ひとつの決断をする。それが歪な関係が崩壊する合図となった。
【1巻あらすじ】ある深夜、アイラは橋渡し人から依頼を受ける。水の森の番犬、喋る犬リャンについてだ。水の森は曰く付きの森で、番犬リャンも謎に包まれた存在だ。旅支度をするアイラの元へ唐突に現われた見知らぬ男が言う「俺は君をかわいそうに思うんだ」恐怖と共に、知らなかった真実が見え隠れし始める。アイラは覚悟を決めて前に進もうとするが……
(以上、Amazonの紹介文から抜粋)

Blindfold=目隠し、という意味です。以下ブラインドフォールドと書きます。目元が覆われたキャラクター達が登場する世界観であると聞いて、そのミステリアスさに惹かれて購入したと記憶しています。ブラインドフォールドという存在は、目で見るのではなく”聞いて”周囲を探ったり状況を理解する盲目の人たちの呼称であり、主人公アイラもそれに属します。聞く、つまり、蝙蝠やイルカのように特殊な超音波(作中では振動波と書いていたと思いますが)を耳鼻から出して物体の形をとらえ眺める、といったことが可能であるのです。なかなかお目にかかれない面白い設定だなと思いました。盲目の人・ブラインドフォールドがどんなふうに感覚器官を使い、非ブラインドフォールド(普通の人間)と関わっているのか、それらが丁寧に書かれているので特殊な設定でありながらすんなりと世界観に入ることができました。
冒頭の一文が惹き込まれます。
「喋る犬リャンの話しを聞いたのは夜半過ぎのことだった……」
ね、冒頭がもう面白そうじゃないですか? 私はこの一文で「あ、買おう」と思いました。
水の森、喋る犬リャン、馬で旅をする、目隠し、秘密……ちょっとだけダークな雰囲気もするファンタジーな世界、私はこういう雰囲気の話が大好きです。独特な世界観を表現されていると思います。創作小説ならではというか。(商業小説でもこんな話を読んでみたいものですが)
驚いたのが、作中にて戦闘シーンが何度も挟まれていたことです。ブラインドフォールドの人たちは特殊な能力で物の形を捉えるとはいえ、基本的に盲目の人たちですから、激しい戦闘など予想だにしていませんでした。振動波をそんなふうに使うのかと驚きと発見と面白さに唸りました。ブラインドフォールドは奥が深い。
しかし、主人公アイラはそんなブラインドフォールドの一人だけど、戦闘向きのタイプではありません。臆病で、いつも不安を抱えているような性格の女性です。ブラインドフォールドとして孤独な生き方をしていたせいでしょうか。読んでいて気の毒になるほど悩み事を抱えており、お話の中でもがきながらどうにかこうにか進んでいきます。(でも、時々感情を破裂させることがあります。見ていてひやひやとするほど)私がせっかちな性格のせいかもどかしさもあるのですが、アイラというキャラクターが彼女なりのペースで前に進み、世界と戦う姿を見守っていたいです。アイラさん涙を拭いて、頑張って……! 応援しています。
クマリというキャラクターについて。男性主人公にヒロイン、という言葉があるのに対し、女性主人公にヒーロー、というのもなんだか言葉の強さが公平じゃなくて変なのですが(何か他にいい言葉があるでしょうか。誰か作ってほしい)、その役がクマリというキャラクターだと理解しています。命を狙われたアイラの危機を救ったり、様々な場面でアイラをサポートし、彼女を守る、とても頼りになるキャラクターです。果たしてクマリはアイラの閉じた心を開くことができるのか……この二人の関係も気になるところです。二人の関係といえば、1巻の、いろいろな状況に耐えきれず涙をこぼすアイラを心配したクマリが、振動波でアイラの表情を探るシーンは読んでいてどきっとしました。奥が深すぎます、ブラインドフォールド。普通に手で触れるよりもくすぐったく聞こえます。
1巻でアイラはブラインドフォールドの独自組織に合流し、2巻で仲間と旅立つ、というのが現在の流れです。以降どうなっていくのか非常に気になります。
少女の心を持った若干大人向けの小説……かも? 少年漫画のような強烈さはないけど、落ち着いて安心して読める、そんなタイプの小説だと思いました。でも、ブラインドフォールドの設定なら、漫画や絵で映えそうだなとも感じました。ビジュアル映えする世界観ですよね。挿絵などあったら……と思うのですが、個人創作にそこまで求めるのもなんだし、それに振動波の描写がたくさんあるのでブラインドフォールドの雰囲気は充分伝わってくるし……難しいところですね。余計なことを言ってしまったかも。
それにしてもネーミングの付け方もセンスがあるし、時々挟まれるファンタジーな小ネタも素敵です。透明な樹皮を持つ大木……聞いただけでわくわくする設定です。ゲームなら本筋放置してまっさきにクエストを解消しに行くやつだと思います。作中で実際に登場したら嬉しいです。他にも不思議な動物が出てきたり、アイディア豊かで読んでいて楽しいです。戦闘シーンは結構痛々しいところがあるのでまたそのギャップに驚かされたりするのですが。波長で見たときや、他の感覚と併用した描写など巧みに感じました。事態に困惑するアイラの独白、「自分を見失たくなかった」という言葉が印象に残りました。かなり切ないキャラクターですね、アイラさん……。世界から切り離される孤独さが伝わってきます。どうかあなたと出会えてよかった、と思えるような人と出会いますように。(というかその存在に気付きますように!!)
2巻はかなり気になる終わり方をしていたし(黒い騎士とはなんなのか……気になりすぎます←しかもダークな騎士とか私の好きな設定)、主人公アイラの秘密が少しずつ紐解かれてきたので是非とも続きを読みたいです。
あとがきにて発行の速度について悩んでいる様子でしたが、でも、設定がかなり凝った世界だし、書くのが大変そうな話だなというのは読んでていてなんとなくわかります。一応私もささやかに書き手側でもあるので、そういったことはつい想像してしまうのです。この前の北海道地震の影響もありますし、作者様の生活も心配しつつ、読み手としては「いつでも見ているし、いつまでも待ってますよ(のんびりと)」という気持ちでいるのですが、好きなペースで発行できるのが創作小説の良いところでですし、作者様の納得できるものを書いてもらえたら読み手は幸福です。応援しております。

作者様のサイトはこちら:Suptnik kud様
(ブラインドフォールドの試し読み、他小説の発行やイベントの情報などあります)

興味のある方はAmazon Kindle、もしくは通販で同人誌を読むことができます。
Kindle版ですとお値段が安いです。でも、文庫版の方が好きです。

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※Wordpressテーマの影響かスマートフォンからだとAmazonのリンクが表示されませんでした
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